様々な音景に塗り替える、優しさも虚しさも儚さも込めた言葉達。
2018年夏、butajiが教えてくれた9つの美しき告白。
とても個人的で、カラフルで、好きなアルバムです。
低音から高音まで悠々と行き来するソウルフルなヴォーカルが、
様々な音の衣装を纏いつつも、欲望や情動を生々しい姿のまま遠慮なく吐き出していく。
butajiのラヴ・ソングは、人間の体内の温度をしている。
たとえば本作のタイトルである「告白」という言葉をひとつ取っても、それを聞いて何を想起するかは人ぞれぞれ、多種多様。聴き手の想像に委ねられている分、それを受け取る側もまた試されているような、非常に本気度の高い「歌」というコミュニケーションがここにある。
しかし、それがダサい表現で言えば「酔いどれ詩人」のようなものなだらしないものではなく、アルコールで自分の胸襟を開き、自分のロマンチシズムや郷愁、人恋しさを、その柔らかで奥深い特徴的な美声に乗せていく。そういったナイーブなダンディズムが、どうしようもなく魅力的だ。また飲みに行きましょう。
(2)タイタニックの舳先で両腕を広げるbutajiが見えた。
(3)世の中を埋め尽くす、うわっつらの言葉に疲れてしまったら、butajiのモノローグに耳を傾ける時。彼の静かな葛藤に満ちた、曖昧な告白は、声帯からこぼれおち、外気と衝突し、いつしか、こんなにも美しい音楽になった。たしかな重量感を持った、艶のある音楽を聴きたいという欲望をかなえてくれる、本格派のシンガー。この歌声が幅広い世代の心を射抜く日を夢見る。
(4)butajiがある朝目覚めると、虫になっていた。
(5)12月25日、ベツレヘムの馬屋で生まれた赤子、その名はbutaji。まばゆいひとつぼしが夜空に瞬き、3人の賢者にbutajiの誕生を報せた。
(6)「ブタジ!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる!あこがれるゥ!」
(7)野心に燃えるbutajiと友人ウォズニアックが完成させた、かつてない家庭用コンピューター。やがて全世界を揺るがすアップル快進撃の始まりであった。
(8)大柄でもないのに名前はブタジ。いまどき「告白」なんてタイトルで、この研ぎ澄まされた内容と、あのルックス、声。とにかく総体としてわかりづらい。同時代の欲求を満たすシンプルなコンテンツがどんどん売れていくなか、片隅で独り、苦労を重ねている。そこに惹かれる。いまの複雑な世界に応答し得る、本当の才能は、きっと一見解りづらい様相を持つと思うから。でも今回のアルバムで、とうとう明らかになると思う。日本のポピュラーミュージックが重要な歌い手を獲得したことが。
(9)この豚野郎。
(10)昔、君がぼくのライブに来てサインをねだった時、ぼくは君が歌っていることに気づいていなかった。ただ変態っぽい男の子が来たなってだけで。ブタジ若かったね。そして俺も若かった。「告白」聴かせてもらったよ。こんどはぼくが君にサインをねだる番だ。